日光東照宮の五重塔の歴史と魅力は?心柱と干支の彫刻の秘密を解説!

日光東照宮の入り口で、ひときわ目を引く鮮やかな朱色の塔。それが「五重塔」です。豪華絢爛な陽明門に向かう前に、まずはこの塔の前に足を止める人も多いのではないでしょうか。

日光東照宮の五重塔には、歴史的な背景だけでなく、現代の東京スカイツリーにも応用された驚くべき建築技術が隠されています。干支の彫刻や心柱の不思議を知ることで、日光観光の深みがぐっと増していくはずです。

日光東照宮の五重塔はいつ誰が建てた?

この立派な五重塔が、誰の手によってどのような経緯でここに建てられたのか。その背景には、徳川幕府を支えた有力大名の深い忠誠心と、繰り返された再建の歴史がありました。

初代は1618年に小浜藩主の酒井忠勝が奉納

五重塔が初めてこの地に誕生したのは、1618年(元和4年)のことでした。寄進したのは、当時の若狭小浜藩主だった酒井忠勝。徳川家光からの信頼も厚かった実力者です。

家康公を祀る東照宮の完成から間もなく、この塔は奉納されました。当時の大名にとって、東照宮に建物を寄進することは、幕府への忠誠心を示す最大級の行動だったと言えます。

今の塔は火災の後に酒井忠進が再建した2代目

残念ながら、酒井忠勝が建てた初代の塔は、1815年の火災によって焼失してしまいました。しかし、そのわずか3年後には再建が始まります。

現在の姿は、1818年(文政元年)に同じ酒井家の酒井忠進によって再建された2代目です。初代の焼失からわずか数年でこれほどの建物を復活させた点に、酒井家の財力と信仰の強さがうかがえます。

落雷や火事のリスクに備えた江戸時代の知恵

日光のような山間部では、昔から落雷による火災が大きな脅威でした。再建された2代目の塔には、当時の建築家たちが知恵を絞った跡が見て取れます。

注目すべきは、建物全体を銅板で覆うなどの防火対策が強化された点。江戸時代の職人たちは、二度とこの美しい塔を失わないよう、持てる技術の粋を尽くして設計に臨みました。

正面に寅・卯・辰が並ぶ干支の彫刻

五重塔の1層目をぐるりと囲む干支の彫刻。単なる動物の飾りと思われがちですが、実は正面に並ぶ3つの動物には、徳川家に関わる重要なメッセージが込められています。

徳川三代の干支が東照宮の入り口を守る

五重塔の正面、つまり東側に彫られているのは「寅(とら)」「卯(うさぎ)」「辰(たつ)」の3つ。これは、徳川家三代の将軍の干支を意味しています。

初代・家康公が「寅」、二代・秀忠公が「卯」、そして三代・家光公が「辰」。この三人の干支が正面に並ぶことで、徳川幕府の盤石な基盤と、家系が未来永劫続いていくことへの願いが表現されています。

方位と干支を組み合わせた江戸時代の空間設計

十二支は古くから時刻や方位を表すために使われてきました。東照宮の五重塔も、この方位学に基づいて厳密に配置されています。

正面に東の方位を司る干支を配置し、建物の四方を守護するようなデザイン。当時の人々にとって、干支はただの動物ではなく、宇宙の秩序や平穏を守るための記号でもあったわけです。

極彩色の顔料で彩られた彫刻の保存状態

彫刻に使われている鮮やかな色は、岩絵具や漆など、天然の素材から作られた貴重な顔料によるものです。近くで見ると、その細かさに圧倒されるはず。

定期的な修復によって、江戸時代当時の輝きが今も保たれています。日光の厳しい寒さや湿気の中でもこの美しさを維持しているのは、まさに日本の伝統技術の賜物と言えるでしょう。

スカイツリーが手本にした心柱の仕組み

五重塔の最大の謎であり魅力なのが、中心を貫く一本の太い柱、通称「心柱(しんばしら)」です。この柱には、現代の建築家も驚くような仕組みが備わっています。

重りでバランスを取る懸垂式という特殊な形

普通の建物の柱は、地面にしっかりと固定されて建物を支える役割。しかし、この五重塔の心柱は、なんと4層目から鎖で吊り下げられています。

この構造を「懸垂式(けんすいしき)」と呼び、柱自体が巨大な振り子のような役割を果たします。地震の際に建物が揺れても、心柱が逆に揺れることで衝撃を吸収し、倒壊を防ぐ仕組みです。

木材の伸び縮みを計算して地面から10センチ浮かす

五重塔の心柱をよく見ると、地面から約10センチほど浮いているのがわかります。これは、職人が意図的に作った隙間です。

木材は年月が経つと、建物の重みや乾燥によって少しずつ収縮します。もし最初から地面にくっつけていたら、収縮した際に建物に歪みが出てしまいます。その変化をあらかじめ計算に入れ、あえて浮かせた状態で設計されているのです。

スカイツリーの制振システムと共通する物理

この「揺れを揺れで制する」という考え方は、東京スカイツリーの制振システムにも採用されています。スカイツリーの中心部にも、五重塔の心柱をモデルにしたコンクリート製の円柱が設置されました。

江戸時代の職人が生み出した耐震技術が、数百年の時を経て現代の最新タワーを支えている。そう考えると、日光の山奥に建つこの古い塔が、急にハイテクな建造物に見えてくるから不思議です。

層によって異なる屋根の向きと建築様式

五重塔を遠くから眺めると、ある一点だけ、他とは明らかに違う部分があることに気づくはず。それは一番上の、5層目の屋根です。

4層目までは平行に並ぶ伝統的な和様を採用

1層目から4層目までの屋根を支える木材(垂木)は、すべて平行に並んでいます。これは「和様(わよう)」と呼ばれる、日本の伝統的な建築スタイルです。

整然と並んだ垂木が、落ち着いた安定感のある外観を作り出しています。東照宮の他の建物とも調和するように、あえてオーソドックスな手法がとられました。

5層目だけが扇状に広がる禅宗様のデザイン

ところが、一番上の5層目だけは違います。垂木が中心から放射状に広がる「扇垂木(おうぎだるき)」という手法が使われており、これは「禅宗様(ぜんしゅうよう)」という建築スタイル。

なぜ、わざわざ一番上だけを変えたのか。一説には「建物は完成した瞬間から崩壊が始まる」という考えがあり、あえて一部を未完成、あるいは異なる形にすることで、災いを避けたと言われています。

異なる様式が混ざることで生まれる独特の美

和様と禅宗様。この2つの異なるスタイルが一つの建物に同居している点は、建築学的にも非常に珍しい特徴です。

下から見上げたときに、最上階だけが少し華やかに、あるいは軽やかに見えるのはこのデザインの違いによるもの。細かな変化を加えることで、建物全体に独特のリズムと飽きさせない美しさが生まれています。

豪華な五重塔の内部が見られるチャンス

普段は閉ざされている五重塔の扉ですが、特別公開の時期には中へ入ることができます。外観からは想像もつかないような、さらに濃密な空間が広がっています。

金箔と漆で装飾された1層目のきらびやかな空間

内部に一歩足を踏み入れると、そこには金箔や極彩色の壁画で埋め尽くされた世界が広がっています。安置されている仏像の美しさも、外からは決して見ることができない魅力。

壁や天井の一つひとつに、江戸の絵師たちのこだわりが詰まっています。薄暗い堂内の中で、わずかな光を反射して金色に輝く空間は、まさに極楽浄土をイメージしたかのようです。

内部公開の時期は公式サイトや現地の案内で確認

五重塔の内部公開は、常に行われているわけではありません。東照宮の特別な行事や、大型連休などに合わせて期間限定で開催されることが多いです。

もし公開期間に当たったなら、迷わず拝観することをおすすめします。時期によっては数年単位で公開されないこともあるため、事前に公式サイトをチェックしておくと確実です。

心柱が実際に浮いている様子を目の前で見る

内部公開の最大の目玉は、やはり「浮いている心柱」を至近距離で確認できること。説明で聞くのと、自分の目で見るのとでは驚きが違います。

柱の下に広がるわずかな隙間は、まさに江戸時代の職人からの挑戦状のよう。長い年月を耐え抜いてきた木の質感を間近に感じながら、その技術の凄さを肌で感じることができます。

五重塔をより深く楽しむ3つのポイント

日光東照宮を訪れる際、五重塔をさらに面白く見るためのヒントを3つにまとめました。意外な数字のつながりや、足元の細かな装飾にも注目です。

1. 標高634メートルを示すスカイツリーとの縁

五重塔が建っている場所の標高は、奇遇にも約634メートル。これは東京スカイツリーの高さ(634m)と全く同じです。

スカイツリーが五重塔の心柱を参考にしたという経緯もあり、この数字の一致は「奇跡的な縁」として語り継がれています。足元にある標高を示す案内板を探して、スカイツリーと同じ高さにいることを実感してみてください。

2. 寄進した藩の名前が刻まれた石柵の文字

五重塔を囲む石の柵にも、歴史の断片が隠されています。よく見ると、柵の柱には寄進した大名や藩の名前が刻まれています。

かつて、これほど大規模な事業に名を連ねることが、各大名にとってどれほど名誉なことだったのか。文字をなぞりながら、当時の人々の信仰心に思いを馳せるのも、東照宮ならではの楽しみ方です。

3. 見上げる角度によって表情を変える屋根の反り

五重塔の美しさを堪能するなら、真下から大きく見上げる角度がおすすめ。屋根が空に向かって優雅に反り上がるラインが最も綺麗に見えます。

日光の山々の緑を背景に、真っ直ぐ伸びる朱色のラインと、重なり合う屋根の陰影。時間帯によって光の当たり方が変わるため、午前と午後でも全く違う表情を見せてくれます。

五重塔を拝観する場所と料金

最後に、実際に現地に行く際に役立つ基本情報を整理しておきましょう。五重塔は東照宮の境内の入り口近くに位置しています。

基本情報

項目内容
正式名称日光東照宮 五重塔
所在地栃木県日光市山内2301
アクセスJR・東武日光駅からバス「表参道」下車徒歩5分
拝観時間9:00〜17:00(季節により変動あり)

表門の手前にあるので外観だけなら無料で見れる

五重塔は「表門」という、東照宮の有料エリアに入るための門の手前に建っています。そのため、柵の外から外観を眺めるだけであれば、拝観料を払わずに楽しめます。

日光散策のルートで、まずは五重塔の外観と干支の彫刻をチェックし、その後に本殿への参拝に進むのがスムーズな流れ。初めて訪れる人でも、すぐに見つけることができるはずです。

内部拝観には東照宮の拝観料とは別に300円が必要

もし内部が公開されている時期に中を見学したい場合は、別途「五重塔内部拝観料」として300円が必要です。これは東照宮本体の共通拝観券(1,300円)には含まれていません。

300円で記念のクリアファイルなどの特典が付くことも。この少額の支払いで、江戸の最高技術を間近で見られると考えれば、決して高くはない価値があります。

混雑を避けるなら朝一番の早い時間帯がおすすめ

日光東照宮は、日中になると多くの観光客で賑わいます。特に五重塔の周りは、写真撮影をする人で混雑しがち。

ゆっくりと彫刻を眺めたり、心柱の解説を読んだりしたいなら、開門直後の午前9時台が狙い目です。朝の清々しい空気の中で見る五重塔は、朱色がより一層鮮やかに目に映ります。

日光東照宮の五重塔に関するよくある質問

参拝客からよく聞かれる、五重塔にまつわる素朴な疑問を集めてみました。

なぜ東照宮に仏教の建物である五重塔がある?

神社に五重塔があるのは、かつての日本に「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」という考え方があったからです。神様と仏様を分けずに一緒に祀る文化が、日光には色濃く残っています。

明治時代の神仏分離令によって、多くの神社から仏教的な建物が消えましたが、日光東照宮の五重塔は奇跡的にその姿を残し、今に伝わっています。

五重塔の中に仏像や宝物は安置されている?

1層目の内部には、五智如来(ごちにょらい)などの仏像が安置されています。塔全体が一種の巨大な仏壇のような役割を果たしているわけです。

宝物については、東照宮の宝物館に別途保管されているものが多いですが、建物そのものが国指定の重要文化財であり、建物自体が巨大な宝物といっても過言ではありません。

他の神社の五重塔との大きな違いはどこ?

一番の違いは、やはりその「極彩色の装飾」と「心柱の構造」です。多くの五重塔は、木材の風合いを活かした素朴なものが多い。

しかし、東照宮のものは家康公の権威を象徴するかのように、これでもかというほどの装飾が施されています。また、心柱が浮いている懸垂式の構造をここまで明確に確認できる場所は、全国的にも非常に稀です。

まとめ:江戸の職人技が光る五重塔の魅力

日光東照宮の五重塔は、単に美しいだけの古い建物ではありませんでした。江戸の有力大名の熱い思いから始まり、二度の火災を乗り越え、現代のハイテク技術のルーツにまで繋がる、知恵と歴史の結晶です。

特に「浮いている心柱」や「三代将軍の干支」の秘密を知ると、ただの通り道だった五重塔の見え方が180度変わるはず。次に日光を訪れる際は、ぜひ立ち止まって、その屋根の下に隠された職人たちの遊び心と覚悟を感じ取ってみてください。

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